嵐山がある嵯峨野は古くから京都でも風光明媚な地域であるため、多くの寺社仏閣があります。嵐山にある寺社仏閣の中でも皇室の離宮からスタートしたことで知られるのが大覚寺です。離宮から始まった寺院というのも興味をそそられますよね。
今回は大覚寺の見どころを、歴史や御朱印などと一緒にご紹介します。
もくじ
大覚寺で注目の見どころ9選!
大覚寺は真言宗大覚寺派の総本山で、嵐山にある有名観光スポットに数えられます。皇室と深い繋がりがあったため、普通の寺院以上に御所らしさを感じさせる見どころが多いです。境内でオススメの見どころに、以下に挙げる9ヶ所があります。
大覚寺の見どころ1:御所より移築された宸殿(しんでん)
宸殿は参拝口から入って右側へ進んだところにある、重要文化財の建物です。宸殿は皇族出身者が住職を務める門跡寺院でなければ見られません。
大覚寺の宸殿は、江戸幕府2代将軍徳川秀忠の娘で皇后になった東福門院和子の御殿を移築したものです。現在では法要など重要な行事が行われる場所になっています。
伝統的な貴族の邸宅に使われる寝殿造の建築様式です。内部には天井の随所にある装飾や、狩野山楽が描いた障壁画などがあります。とくに山楽の障壁画は桃山文化の豪華絢爛さを受け継いでいるため、金地に牡丹や梅を描いた「牡丹図」や「紅梅図」は見ごたえ抜群です。
なお見学ルートである縁側の廊下には、歩くとキュッキュッと鳴る鴬張りになっています。
大覚寺の見どころ2:院政の舞台になった正寝殿
正寝殿は宸殿の後ろにある御所風の建物です。鎌倉時代に後宇多法皇が院政を行った場所として知られています。また室町時代には、南北朝統一に向けた講和会議や三種の神器の引き渡しも行われた意味でも、中世日本の歴史が動いた舞台と言える場所です。
現在の建物は、豊臣秀吉が政権を握っていた桃山時代に再建されました。すべてで12の部屋からなる建物で、建築様式には現代日本の和室でもおなじみの書院造が採用されています。
なお部屋は「紅葉の間」や「竹の間」などと名付けられており、襖絵に描かれているものが由来です。内装が非常に豪華で美しく、王朝文化や皇室の権威を今に伝えています。
大覚寺の見どころ3:防犯対策が万全な村雨の廊下
宸殿と正寝殿、御影堂を繋いでいる廊下です。曲がる部分の直角である様が稲妻を、柱が降っている雨をイメージさせることから名付けられました。
宸殿と同じように歩くと音が鳴る鴬張りになっています。加えて天井も、刀や槍を振り上げにくいように低めに作ってあるのが特徴です。いずれも不審者が忍び込んで犯行を及べないようにする安全対策となっています。
大覚寺の見どころ4: 大覚寺の歴史で重要な人物の像がある御影堂
宸殿の右側にある建物です。歴代天皇による般若心経が奉納されている勅封心経殿の前にあることから「心経前殿」の名前もあります。なお心経殿を拝めるように、内陣の前側が開かれた状態になっているのが大きな特徴です。
大正天皇の即位で使われた饗宴殿が1925年に移築される形で建立されました。内部には嵯峨天皇や恒寂(こうじゃく)法親王、後宇多法皇など、大覚寺の歴史を語る上で欠かせない人物の像が祀られています。激動の歴史を歩んできた大覚寺の歴史を感じるにはオススメの場所です。
大覚寺の見どころ5:迫力ある雲龍図が魅力の安井堂
御影堂の右側手前にあります。元々京都東山にあった安井門跡蓮華光院の御影堂で、明治時代に現在の場所へ移築されました。なお「御霊殿」という別名もあります。
安井堂最大の見どころは、内々陣の天井に描かれている雲龍図です。非常に壮麗さと迫力を感じさせる作品であるため、安井堂拝観の際は、ぜひお見逃しないように天井を見てみてください。加えて雲龍図の周辺には花鳥などが描かれており、鮮やかさと見事さで心奪われるでしょう。
大覚寺の見どころ6: 寺院の中心・五大堂
安井堂の隣に建つお堂で、現在大覚寺の本堂となっています。江戸時代中期、18世紀後半に建てられた建物です。
内部には大覚寺のご本尊である不動明王など五大明王が祀られています。なお堂内で見られる五大明王像は、昭和時代に製作されたものです。
五大堂は大沢池のほとりにあり、東面は観月台となっています。観月台は境内最大の記念撮影スポットであるため、広がる池をバックに1枚写真はいかがでしょうか。
大覚寺の見どころ7:国内最古の人工池である大沢池
大沢池はお堂の東側にある境内最大級のスポットです。嵯峨天皇が離宮を造営した際に作られたことから、「国内最古の人工池」として知られています。また中国の洞庭湖をモデルにしたため、「庭湖」の異名もある池です。1923年には国の名勝に指定されました。
池の北岸側には天神島・庭湖石・菊ヶ島が配置されています。2つの島に1つの石を配置する方法は、嵯峨天皇がはじめたとされる華道嵯峨御流の考え方の基礎とされるものです。なお天神島には、天神様こと菅原道真を祀る社や嵯峨天皇の歌碑もあるため、立ち寄ってみるとよいでしょう。
加えて毎年中秋の名月になると、大覚寺最大の行事である観月の夕べも行われます。観月の夕べについては、後で詳しくご紹介しましょう。
大覚寺の見どころ8:嵯峨天皇の時代からあった名古曽の滝跡
大沢池から北東に100mの場所にある、離宮時代の庭園にあった滝の遺構です。1923年に大沢池と一緒に国名勝に指定されました。加えて昭和時代から平成時代に行われた発掘調査にて、滝の水を大沢池に導くための鑓水(やりみず)も発見され、現在では復元されています。
名古曽の滝は、平安時代中期の貴族である藤原公任(きんとう)が、「滝の音はたえて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ」と詠んだことでも有名です。滝の水はすでに尽きてしまったものの、滝の名声が伝えられている様を詠んだ内容になっています。ちなみに百人一首に数えられる歌としても有名です。
大覚寺の見どころ9:秋の風物詩である紅葉
大覚寺は境内にある見どころ以外にも、秋の紅葉も一見の価値があります。紅葉の見頃は11月中旬~下旬で、基本的に大沢池一帯がオススメです。池の周辺は見頃を迎えると池の周囲にあるカエデが色付きます。池の水面に映し出される鮮やかな赤色は言葉に表しがたい美しさです。
境内のオススメ紅葉スポットは、他にも心経宝塔一帯やもみじロードなどもあります。心経宝塔自体が朱色の建物であるため、周辺の紅葉と一緒に見ると、鮮やかな赤色になった景色を見られるでしょう。手前の放生池に映る心経宝塔と紅葉の組み合わせもまた見事です。
一方もみじロードは天神島の北側にある道で、紅葉シーズンには両側の紅葉が鮮やかに映えます。紅葉のトンネルに見え、幻想的な気分に浸りやすいです。
加えて紅葉の時期は、夜間ライトアップも行われます。とくに放生池では、光に照らされる心経宝塔と紅葉が暗い湖面に映し出される分、より印象的な光景を目に焼き付けられるでしょう。
大覚寺最大の行事・観月の夕べを解説!
大沢池で秋に行われる観月の夕べは、大覚寺の行事でも最大のものです。観月の夕べについては、はじめて名前を聞く人も、聞いたことのある人もいるでしょう。
観月の夕べについて知ると、秋に大覚寺を訪れるのが楽しみに感じられます。
毎年中秋の名月に開催
観月の夕べは毎年中秋の名月の夜に、大沢池で催される行事です。元々嵯峨天皇が大沢池で貴族と行った舟遊びが起源とされています。
毎年旧暦の8月15日を含む3日間で行われ、時間は17:00~21:00です。なお料金は拝観料の他、舟席券が1,000円、お茶席が800円になっています。
舟で池を周りながら月を愛でる
観月の夕べは、龍頭舟などに乗って池を20分かけて1周しつつ、夜空や湖面に浮かぶ月を眺めるものです。周遊中にはスタッフが観月の夕べのいわれなどについて解説してくれます。平安時代に風流な舟遊びを楽しんだ貴族の気分を体感できるでしょう。
なお舟は1日につき4回、1時間に1度出るスケジュールが組まれています。予約申し込みをした時間帯の舟に乗ります。中でも19時台と20時台が、ちょうど日が沈んで真っ暗な分、月の明るさや美しさを楽しめる点でオススメです。
お茶席や法会もある
観月の夕べでは舟による周遊以外にも、さまざまな催しがあります。五大堂で用意される茶席も人気が高いです。1人15分ではあるものの、大沢池を見下ろせる場所で抹茶とお菓子がいただけます。
また中秋の名月に当たる日は、18:30より満月法会が行われるのも恒例です。僧侶が読経で月天をお招きし、豊作や人々の幸せを祈ります。
他にも心経宝塔周辺での模擬店の出店やコンサートも行われ、さながら大きなお祭りのようです。
御所でもあった大覚寺の歴史・豆知識
大覚寺の歴史は非常に長く1,200年におよび、日本史の中で重要な役割を果たした時期もあります。大覚寺の中を見て回る前に歴史や豆知識を知っておくと、境内にある建物や庭園の伝統を感じられるでしょう。
嵯峨天皇の離宮から寺院へ
大覚寺の歴史は平安時代初期の833年から始まります。当時すでに退位し上皇となっていた嵯峨天皇が、かねて嵯峨野に造営していた離宮に御所を新築・移転しました。そして御所内に、弘法大師空海が不動明王など五大明王を祀るお堂を建立します。
846年には嵯峨天皇の皇女である正子内親王が、父天皇の御所を本格的な寺院に改築しました。そして初代住職には、嵯峨天皇の孫・恒寂法親王が就任します。
後嵯峨法皇により日本中世史の重要なスポットに
平安時代に本格的な寺院となった大覚寺も、しばらく荒廃したままの状態が続きました。大覚寺が再興したのは、鎌倉時代後期の1308年に後宇多法皇が入ってからのことです。法皇は全域を整備し、院政を行うための場としたことから、大覚寺は「嵯峨御所」と呼ばれます。
なお当時の皇室は、皇位継承をめぐって2つの血統が対立している状態でした。血統のうち後宇多法皇が属す側は、彼が大覚寺で院政を行ったことから「大覚寺統」と呼ばれます。一方大覚寺統と対立していた側は「持明院統」と呼ばれ、両者の対立はやがて南北朝の動乱の原因にもなりました。ちなみに後宇多法皇の息子が、鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇です。
加えて大覚寺は、南北朝の動乱が終わる舞台にもなります。境内で講和会議が行われ、1392年には南朝側から北朝側に三種の神器も譲渡されました。中世の日本で重要な役割を果たした大覚寺ですが、応仁の乱にて伽藍がほとんど焼失してしまいます。
江戸時代の再興から現代へ
応仁の乱で焼失した後、戦乱の影響もあって大覚寺は復興されないままでした。ようやく再建されるようになったのは、江戸時代に入り徳川家光が将軍になった寛永年間のことです。御所からは宸殿が移築されたのも、再建の一環でした。
明治時代以降は皇室ゆかりの寺院だった歴史もあり、政府による保護を受けます。昭和時代の1938年には、境内全域が「大覚寺御所跡」として国史跡に指定されました。現在では嵐山エリア有数の観光スポットとして高い人気を誇る寺院の1つです。
大覚寺の豆知識1:歴代住職は多くが皇族
大覚寺の歴代住職は、初代が恒寂法親王であることや元々御所を寺院に改築した歴史もあって、長らく皇族が務めてきました。歴代住職の中には後宇多法皇や彼の父・亀山天皇など皇位経験者もいます。
皇族が住職に就任する伝統は明治時代で終わりました。しかしかつて多くの皇族が住職であったことを頭に入れると、境内の随所に残る皇室の名残をより感じられるでしょう。
大覚寺の豆知識2:実は華道の家元でもある
大覚寺は華道の家元としても有名です。嵯峨天皇が大沢池の水で花を生けたことから、華道嵯峨御流(さがごりゅう)が生まれました。
現在でも境内には華道専門の部署があり、嵯峨御流の継承や普及が行われています。加えて大覚寺では、4月の華道祭など花関係の行事も多いです。
大覚寺の魅力的な御朱印をご紹介!
寺社仏閣を巡るたびにいただける御朱印は、大覚寺でもいただけます。御朱印の種類は普通にいただけるものだけでも多いため、なおさらお参りが楽しみになるでしょう。
御朱印をいただける時間・場所
大覚寺で御朱印をいただける時間は、拝観時間と同じ9:00~17:00です。
場所は拝観受付の横にある窓口や五大堂の授与所で、拝観前に御朱印帳を預け、拝観終了時にいただきます。なお奉納料(料金)は300円です。
通常の御朱印は「五大明王」など8種類
大覚寺でいただける御朱印のうち、通常のものは「五大明王」などになっています。種類はすべてで8種類です。
- 真言宗十八本山第五番札所:「五大明王」
- 真言宗十八本山第五番札所:御詠歌
- 近畿三十六不動尊霊場第十三番:「五大明王」
- 近畿三十六不動尊霊場第十三番:御詠歌
- 「不動明王」
- 「愛染明王」
- 「心経殿」
- 「心経宝塔」
限定の御朱印もある
大覚寺には通常のもの以外に、季節や行事限定の御朱印も色々あります。主な種類は以下に挙げる通りです。
- 桜の御朱印
- 花まつり(4月8日):「釈迦如来」
- 宵弘法限定(8月20日):「返照金剛」
- 観月の夕べ限定:「月天」
- 紅葉ライトアップ限定
- 嵯峨菊展限定(11月):「さがきく」
オリジナル御朱印帳もご紹介!
大覚寺ではオリジナル御朱印帳があります。すべてで4種類あり、奉納料は御朱印込みで1,800~2,000円です。以下のような種類があります。
- 龍頭:観月の夕べの龍頭舟がテーマ(2,000円)
- 牡丹図:宸殿にある狩野山楽の「牡丹図」がテーマ(2,000円)
- 野兎図(木目調):正寝殿の「野兎図」がテーマ(1,800円)
大覚寺拝観の基本情報をご案内!
大覚寺の拝観で拝観時間などの基本情報は欠かせません。大覚寺の拝観料や拝観時間などは以下の通りです。
大覚寺の拝観料
大覚寺の拝観料は、お堂エリアと大沢池エリアで異なります。
【お堂エリア】
大人 | 500円 |
小中高生 | 300円 |
※障がいがある方の場合は、障害者割引が利用できます。障害者手帳を提示すれば本人のみ無料です。
【大沢池エリア】
大人 | 300円 |
小中高生 | 100円 |
※障がいがある方の場合は、障害者割引が利用できます。障害者手帳を提示すれば本人のみ無料です。
大覚寺の拝観時間・滞在時間の目安
お休み | 年中無休 |
拝観時間 | 季節に関係なく境内全域で9:00~17:00 |
最終受付 | 16:30まで |
※ちなみに早朝写経の場合は、8:30より入場できます。
滞在時間の目安は、お堂エリア・大沢池エリア含め40~60分ほどです。
大覚寺拝観での写真撮影の注意点
大覚寺を拝観する際、お堂や池などの写真を撮りたいと思うでしょう。写真撮影の際は1点だけ注意点があり、お堂内部や僧侶は撮影禁止です。とくにお堂の内部は仏様がいらっしゃるとされるのが理由になっています。
お堂の外観や大沢池など庭園は撮影しても問題ありません。他にもドローンでの撮影は一切禁止です。
大覚寺にアクセスするには
大覚寺に出かける際、アクセスする方法も気になりますよね。大覚寺へのアクセスには、以下のようにいくつかの方法があります。
バスを利用する場合
京都駅から | 烏丸口バスターミナルから市バス28系統で約54分乗車し、「大覚寺」バス停で下車後すぐです。運賃は市内同一料金で230円となります。 |
JR嵯峨嵐山駅から | 市バス91系統に乗れば、所要時間6分で「大覚寺」バス停に着きます。運賃は同じく230円です。 |
嵐電(京福電鉄嵐山本線)嵐山駅から | 駅前の「嵐山天龍寺」バス停より京都バス94系統で「大覚寺」バス停に向かいます。乗車時間は約11分、運賃は230円です。 |
電車を利用する場合
京都駅から電車を利用する場合は、JR嵯峨野線(山陰本線)の嵯峨嵐山駅が最寄り駅になります。嵯峨嵐山駅までの所要時間は約16分、運賃は240円です。
嵯峨嵐山駅から大覚寺までは徒歩で約20分かかります。駅の北に向かう細い道を進み、京都府道136号線を経由するルートがわかりやすいです。
市内の繁華街である四条からアクセスする場合は、阪急線・嵐電利用の方法があります。阪急京都線の烏丸駅から大宮駅まで移動し、近くの四条大宮駅からは嵐電で終点の嵐山駅に向かうルートです。所要時間は約32分・運賃は380円となります。なお嵐山駅からのバスはすでにご紹介した通りです。
タクシー・車を利用する場合と駐車場情報
京都駅からタクシーを利用する場合は、烏丸口のタクシー乗り場から利用できます。所要時間約30~40分、運賃は約2,700円です。
車を利用する場合は、名神高速京都南インターから国道1号線・9号線や京都府道113号線などを経由し約30分で着きます。門前に参拝者用駐車場があり、スペースは約30台分です。料金は2時間500円になっています。
ただし紅葉の時期は非常に混雑して満車になりやすいため、電車やバスでのアクセスがオススメです。