京都観光の定番名所のひとつに数えられる金閣寺。
修学旅行のコースにも必ずといっていいほど含まれており、京都で一番有名なお寺といっても過言ではありません。
実はこの金閣寺、本当の名前は鹿苑寺といい、金閣寺というのは通称です。その由来は境内にある舎利殿という建物が「金閣」と呼ばれていることから。パンフレットなどでもおなじみの金色の建物ですね。金閣寺に訪れる人は、多くがこの舎利殿を目当てにやってきます。
しかし金閣寺にはこの舎利殿のほかにも、見どころはこれでもかとあり、境内を一周するには1時間以上の時間を要するほど。訪れてみれば、見応え抜群の内容にきっと満足するはずです。
今回はそんな金閣寺の魅力を余すところなくお伝えしていきます。
もくじ
金閣寺の見どころ8選
舎利殿
金閣寺で一番の見どころは、やはり金色に輝く舎利殿です。池のほとりに佇み、水面に反射する姿がその荘厳な面持ちをより際立たせています。
舎利殿のユニークなところは、建物を構成する三層が階層ごとに違った建築様式を取り入れているところです。
- 一層目(法水院):寝殿造りという様式で、金箔が塗られておらず古めかしい雰囲気
- 二層目(潮音洞):武家造りという様式。外側にだけ金箔が塗られている
- 三層目(究竟頂):禅宗仏殿造りという中国風の様式。床を除いて外側も内側も金箔が塗られている
上の層に行くほど豪華な作りになっているのが特徴ですね。
内部は非公開となっていますが、足利義満坐像や四天王像などの仏像が多数安置されているほか、お釈迦様の遺骨である仏舎利も祀られています。前を通るだけでもご利益がありそうです。
鏡湖池
金閣寺は池泉回遊式庭園と呼ばれ、その中核を成すのが舎利殿の手前に広がる鏡湖池です。境内の半分以上にもなる広大な池には、亀島、鶴島などところどころに小さな島が点在。なかでも葦原島と呼ばれる島には仙木の松が生えており、池を神聖な雰囲気に彩ります。その佇まいから仙人が住む島を意味する蓬莱島などとも呼ばれているんですよ。
また室町時代の大名が奉納した石もあり、各大名の名前が付けられています。播磨国を支配した赤松氏、足利家の支流である細川氏などは聞き覚えのある人も多いのでは?
陸舟の松
金閣寺の境内にある陸舟の松は、足利義満公が盆栽として愛でていたものを、その名の通り舟の形に剪定し直したものです。樹齢600年以上を誇る古木で京都の天然記念物に指定されており、京都三大松のひとつに数えられています。
境内に当時の建造物はほとんど残っていないため、この陸舟の松は義満公の生きた時代を感じられる数少ない見どころといえます。
方丈
方丈は金閣寺の本堂にあたる建物で、境内の中心に位置します。面積は約200平方メートルにもなり、金閣寺のなかでは一番大きな建造物です。
方丈は1602年(慶長7年)に西笑承兌(さいしょうじょうたい)という僧侶によって建造され、のちの1687年(延宝6年)、後水尾天皇の寄進で改築が行われました。内部には聖観世音菩薩坐像や、足利義満像などが安置され、また江戸時代・狩野派の絵師による杉戸絵などもあり、歴史的価値が高いことから国の重要文化財に指定されています。
通常は拝観できませんが、特別拝観などでは内部が見られることもあります。
不動堂
金閣寺境内の建物でも不動堂の建立はとくに古く、現存するものは戦国時代の天正年間(1573~1592年)、豊臣政権下の大名・宇喜多秀家によって再建されたものです。以前の建物は応仁の乱で焼失していますが、これに関しては鎌倉時代、1225年(嘉永元年)に建てられたと推測されています。
歴史が長いという点でももちろん価値のある建物ですが、不動堂の御本尊はあの弘法大師・空海が彫ったされる石造不動明王で、これまたいかにもご利益がありそう。実物は公開されていませんが、健康を願う人はぜひお参りしておきたい場所です。
夕佳亭
夕佳亭(せっかてい)は江戸時代の茶人・金森宗和が、後水尾天皇をおもてなしするために建造した茶室のある小屋です。現存する建物は1874年(明治7年)に再建されたもの。
数奇屋造りの小屋自体にも赴きがあります。しかし夕佳亭が見どころになっているのは、なんといっても、この小屋から眺める舎利殿の美しさが理由です。夕佳亭は少し小高い丘のうえに立っており、舎利殿を少し離れた位置から見下ろせます。
とくに舎利殿に夕日が差す様子の大変に美しいことから、「夕日に映える金閣が殊(こと)に佳(よろ)しい」という意味を込めて夕佳亭と名付けられました。拝観時間が17時までなので時期によっては難しいかもしれませんが、ぜひ夕日に照らされた舎利殿を眺めてみたいものです。
総門
金閣寺の見どころは、実は境内に入場する前から始まっています。お寺の入り口である総門には、金閣寺の由緒正しさを示す要素がいくつも隠されているんですよ。
まず総門の屋根の瓦に刻まれた「五七桐(ごしちのきり)」という寺紋は、天皇家から直接賜った紋です。これは江戸時代の後水尾天皇にもゆかりがあるなど、金閣寺が天皇家と関わりが深いお寺だからこそでしょう。
そして総門におけるもうひとつの見どころが、外側の土塀です。地味で見落としがちな部分ですが、この土塀に引かれた5本の白線は、寺の格式において最高位であることを表しています。
竜門滝
舎利殿の北東には竜門滝という小さな滝があるのですが、この滝の名前にはおもしろい由来があります。
大事を成すための狭き門を表した登竜門という言葉はご存知でしょう。これは中国の故事で、「鯉が滝を登って龍になった」という逸話からくるもの。竜門滝はこの故事に由来して名付けられた滝なのです。
滝の下には鯉魚石(りぎょせき)という大きな岩があり、上を向いて尖ったこの岩が水をかき分ける様子が、まるで滝を登る鯉のように見えます。
金閣寺の歴史と豆知識
金閣寺はもとを辿ると、鎌倉時代に朝廷で公卿を務めていた西園寺公経(さいおんじきみつね)が建立した西園寺に行き着きます。この土地を室町時代の3代将軍・足利義満が河内の領土との交換で譲り受け、建立された邸宅が金閣寺です。
室町時代・金閣寺の創建
1397年(応永4年)、義満によって改築・新築された金閣寺は、個人の邸宅ながら二条御所にも匹敵する規模を誇っており、義満はそこから晩年までこの邸宅にて主に政務を行っていたといいます。このときはまだお寺ではないので、邸宅の名前も「北山殿」と呼ばれていました。
義満は日明貿易を開始した将軍で、舎利殿の三層目の禅宗仏殿造りなど、中国風の建築様式を取り入れている点などもその影響が強いです。
義満の没後、1420年(応永27年)になると北山殿はその遺言を受けて禅寺になります。このとき義満の法号・鹿苑院殿にちなみ、「鹿苑寺」と名付けられました。その後、1467年~78年に起きた応仁の乱の被害を受け、ほとんどの建物は焼失してしまいますが、このときも舎利殿は残っています。
江戸~明治時代・金閣寺の再興
江戸時代になると、家康や秀吉も重用した僧侶・西笑承兌がこれを再興。明治初期には廃仏毀釈の発令により、仏教を廃する動きが盛んになりましたが、そのころから金閣寺は境内を一般公開し、拝観料を頼りに寺社を維持しました。
その後、1897年に特別保護建造物、1929年には国宝に指定。1950年にはなんと舎利殿が放火に遭い、焼失してしまいますが、政府からの補助や全国からの寄付の甲斐もあり、1955年には再建されています。現存する舎利殿はこのとき再建されたものです。
再建時に使われた金箔の総重量は20kg。これだけで7億円相当のお金がかかっているといいます。ちなみに屋根の上の金鳳凰は唯一焼け残っていたものです。
金閣寺の見学ルートを紹介
金閣寺の拝観にはルートが決められていて、境内はじっくり周ると1時間半ぐらいの時間がかかります。順路は以下の通り。
-
- 1.総門
- 2.鐘楼(土日は16:30まで鐘を鳴らせます。※料金はひとつき200円)
- 3.拝観受付・庫裏(庫裏では1,000円で写経ができます)
- 4.イチガシ(天然記念物に指定されている古木)
- 5.唐門
- 6.葦原島
- 7.舎利殿
- 8.方丈
- 9.陸舟の松
- 10.榊雲
- 11.銀河泉(義満公がお茶の水に使ったといわれる湧き水)
- 12.巌下水(義満公が手洗いに使った)
- 13.金閣寺垣・虎渓橋
- 14.竜門滝
- 15.安民沢
- 16.白蛇の塚
- 17.夕佳亭
- 18.朱印所
- 19.不動堂…おみくじが引けます
金閣寺の拝観時間・料金・アクセス・休憩所など
金閣寺の住所・拝観時間・料金は以下の通り。
住所 | 京都府京都市北区金閣寺町1 |
拝観時間 | 9:00~17:00(年中無休) |
料金 | 大人(高校生以上):400円 小中学生:300円 |
特別拝観の際は料金が変更になる場合もあります。アクセスに関しては電車とバス・もしくは車を利用します。
電車・バスを利用
金閣寺は電車の最寄り駅から徒歩1時間近くの距離があるため、基本は電車からバスに乗り換えて向かうことをオススメします。
- おすすめルート
JR京都駅からアクセスする場合、京都駅バス停から市バス「101・205系統」に乗り「金閣寺道バス停」で下車。乗り換えが少なく、一番わかりやすいルートです。京都駅からの所要時間は約40分、料金は230円かかります。 - ルート2
「京都駅→地下鉄烏丸線→北大路駅下車・バス205系統に乗り換え→金閣寺道」というルートもあり、こちらは約30分での到着が可能。料金は地下鉄260円、バス230円で490円かかります。 - ルート3
阪急電車を利用する場合は阪急京都本線「西院駅」で下車。バス停「西大路四条」から市バス205系統を利用します。西院駅からの所要時間は約20分。料金は230円かかります。
車を利用
車で金閣寺へ参拝する場合は、名神高速道路を利用し「京都南第1インター」で下道へ。お寺には最初の60分が300円、以降150円の専用駐車場があります。もし空いていない場合も、近隣に有料駐車場がたくさんあるので安心です。
休憩所
金閣寺には、拝観出口のすぐそばに「金閣寺不動釜茶所」というお茶屋さんがあり、そこが観光客の休憩所として使われています。境内の外にあるので拝観をしていない人でも利用できます。名物の茶菓子は金箔をあしらった落雁。拝観の余韻に浸りながら一息つけそうです。
金閣寺周辺のおすすめスポット
金閣寺の参拝が終わったら、せっかくなら周辺の名所も回っておきたいところですよね。徒歩で行けるオススメのお寺・神社などが多数あるので、こちらも紹介しておきます。
竜安寺
金閣寺から徒歩20分の立地にある「竜安寺」は、1450年、大名・細川勝元によって創建されたお寺です。石庭の美しさは世界的にも有名で、イギリス女王・エリザベス2世も来日中に絶賛したといわれています。
春には枝垂桜、初夏には境容池の睡蓮が美しく、四季折々の表情を楽しめます。
仁和寺
真言宗御室派の総本山「仁和寺」は888年に光孝天皇・宇多天皇によって創建された由緒あるお寺。境内には五重塔や、それと同時期に植えられた御室桜などがあり、見どころ満載です。
金閣寺からは徒歩約30分。金閣寺・竜安寺・仁和寺は「きぬかけの路」という全長2.5kmの観光道路で結ばれているので、この3つを一緒に散策するのもオススメです。
平野神社
平安京が遷都された794年からの歴史をもつ平野神社は朝廷との関りが深く、源氏・平氏の氏神となったほか、桜の名所としても有名。境内には約60種の桜が植えられており、シーズンにはライトアップやコンサートイベントなども開催されています。ぜひ桜の季節に訪れたいものですね。
金閣寺からは徒歩約15分の距離にあります。
わら天神
わら天神の愛称で親しまれる敷地神社は、古くから北山の神として祀られている神社で、義満公が金閣寺を創建する際、参拝の便をよくする目的で現在の場所に移転した経緯があります。安産の神様として有名なので、出産の予定がある人はぜひ足を運んでみてください。
金閣寺からは徒歩約10分でアクセスできます。
北野天満宮
学問の神様・菅原道真公が祀られている北野天満宮は、受験生の合格祈願の聖地。学業に限らず、何か目標に向けて頑張っている人が訪れておきたい場所です。
見どころは境内に植えられている約50種、1500本もの梅です。こちらは年明けから初春にかけてがシーズン。秋には350本のもみじを有する「もみじ苑」も綺麗なので、一年通して自然の美しさを堪能できます。
金閣寺からは徒歩約25分です。